【文字起こし】1785年3月4日付、キャンベル提督からサー・ハリー・パーカー宛書簡――望遠鏡の借用申請

以下はジョン・キャンベル提督の書簡 RGO 14/13 と、その文字起こし。

London 4^th^ March 1785
Sir
Wishing to ascertain the
Longitude of St John[']s[,] Newfoundland
by observations of the Eclipses of Jupiter[']s
Satellites I beg you will please to move
the Commissioners of the Board of Longitude
to indulge me with one of the acromatic [sic]
Telescopes, now in their possession unemployed,
for that purpose.
I am
Sir
Your most Oded^?^
Humble Servant
Jn^o^ Campbell

Sir Harry Parker Bar^t^

• 木星の衛星食を利用してセント・ジョンズの経度を算出したい。
• そのためにアクロマート屈折望遠鏡を借りたい。
• 経度委員会所有のうち、そのような望遠鏡を貸し出してくれるように、委員たちに発議してほしい（？）

本文と署名で大文字の J と C の書き方が異なるし、署名だけ線がガタついている。本文は口述筆記で署名のみキャンベル提督の直筆、かもしれない。

1785年のニューファンドランド総督任期時のキャンベル提督と天文学いえば、望遠鏡の他にマッジのクロノメーターの実証実験も行っている。その実証実験のためにもセント・ジョンズの経度算出が必要だったのかもしれない。

メモ:

• 木星の衛星食を利用した経度測定について: ガリレオ衛星と世界地図
• 1785年の『航海年鑑』: Nautical Almanac and Astronomical Ephemeris: For the Meridian of the Royal Observatory at Greenwich. 1785, 1780
• achromatic telescope: アクロマート（レンズを使った）屈折望遠鏡
  • achromatic : アクロマートの: 屈折率の異なる二種類の硝材で作った2枚のレンズを組み合わせて、二つの波長で色収差をなくするように設計された色消しレンズ（アクロマート | 天文学辞典より）。
  • 1758年にショート、ドロンドがアクロマートレンズを製作した旨を英国学士院へ報告した（地人書館:『望遠鏡400年物語』年表より）。
  • 屈折望遠鏡の開発（17世紀）→色収差の影響が大きいという欠点→ニュートンが発明した反射望遠鏡が広く使われるようになった→ドロンドによる色収差レンズの発明（18世紀中頃）→屈折望遠鏡に再注目（ドロンド | オプティペディア - Produced by 光響の概要）
  • John Dollond FRS (10 June (21 June NS) 1706 – 30 Nov 1761): ウィキペディア; ドロンドの娘 Sarah はJesse Ramsden と結婚しており、Ramsden は義父のアクロマートレンズの特許料の一部を得ていた（Wikipediaからのメモ。要確認）。; 1761年にFRS選出（Dollond; John (1706 - 1761) | Royal Society）
  • James Short FRS (10 June (21 June NS) 1710 – 14 June 1768): 航海用六分儀の原型を実装した。遺言執行者の一人はキャンベル艦長（当時）
• Sir Harold [Harry] Parker, 6th Baronet (1735–1812): Wikipedia; Find a Grave 1782-5年経度委員会の secretary を務めていた。（Admiral Sir Hyde Parker (1739 – 16 March 1807): Wikipedia; DNB の兄）

以前文字起こしした内容をコピペするだけの簡単記事作成……と思っていたら調べ物が多かった。

当時旗艦の士官候補生だった人の回想: "Our admiral was a great astronomer and took delight in lunar observation." (Gardner, 44)
借用した望遠鏡で月の観測をしていたのかもしれない。