creature2018@仮設

長い18世紀のイギリス

75頭の犬を乗せた旗艦

James Anthony Gardner, Recollections of James Anthony Gardner, 1906, pp. 41-55, Internet Archive からのメモ。

1784か1785年の秋。ニューファンドランドから帰国する際、希望する者は誰でも犬(1人1頭?)を連れ帰ってよいとキャンベル提督から許可が出ていた。それで旗艦に乗せられたのが合計75頭。これらの年の航海ではどちらもクロノメーターの実証試験として夜間に危険海域を爆走してもいる。艦隊司令官の権限を使ってやることが犬の連れ帰り許可&航海術の実験というのはキャンベル提督らしいと思う。

その75頭というのはおそらく現地産のニューファンドランド(犬種)だったのではないかと。その賢さと気性の穏やかさ、そして体格のよさから当時の英国で労働力としても人気だった様子。船着き場で落水した子供を助けたニュースもある。(The Lady's Magazine, vol. 27, 1796, p. 381, Google Books

水兵と利口な犬、士官候補生と番犬

セント・ジョンズで入院中のコリンズという水兵が、禁止されている酒を自分の犬に買いに行かせる話も面白い――まずコリンズは犬の首にボトルを提げ、銀貨を口に含ませて送り出す。犬は主の望みを心得ていて、ちゃんとパブまで行き(賢い)、吠え声に気づいて出てきた店主が酒瓶にラム酒を入れてくれてから銀貨を吐き出し(賢い)、帰り道も病院の正門ではなく穴掘りルートを使い見張りの目をかいくぐって主の元に戻る(賢い)。ある日ついにそんな「密輸」が発覚した際も、その創意工夫に免じて主従どちらに対しても懲罰処分はなかった。

チャーリー・ビセットという士官候補生とその犬の話も興味深い。ニューファンドランドからの復路の航海中、当直の呼び出しをしようと操舵手が眠っているビセットに近づくと、足元に控えていた犬が襲いかかってきて起こすことができない。そのようにしてビセットは呼び出しに気づかなかったと弁明して、当直の最初の一時間を体よくサボることしばしばだった。

画家と同姓の側仕え

それから、キャンベル提督の servant として Thomas Landseer という人物がいた。ニューファンドランド(犬種)の絵の数々で有名な画家と同姓なのがちょっと気になる。親戚かな?

Oil painting, 'Lion: A Newfoundland Dog' by Edwin Landseer, via Wikipedia Edwin Landseer (1802 - 1873), Lion: A Newfoundland Dog, 1824, Wikipedia.

キャンベル提督自身が犬を連れ帰ったのかというと、たぶんそうしていない気がする。クロノメーターに何かあるといけないから。しかし姪っ子甥っ子たちのために連れ帰った可能性もある。