クロフォード将軍はロドリーゴで負傷するもガスリー医師のドレナージにより一命をとりとめ帰国療養、その後ワーテルローの戦いにぎりぎり参戦。ピクトン将軍と再会し平和に罵り合う。
「病み上がりは引っ込んでろ」
「私服野郎はいっそ鉄鍋でも被ってろ」
被ってほしい
そして何だかんだで生還した二人であったが何だかんだで叙爵はされませんでした。めでたしめでたし。←
戦争のあとにはよく貴族の地位が与えられたが、師団指揮官にすぎなかったピクトンにはなにも与えられず、最上級バス勲爵位に叙せられただけだった。彼曰く「突破口の頂上に貴族の冠でもあったら、ほかの連中と同じ幸運が手に入っただろうに」(『ウェリントンの将軍たち』21頁)
叙爵されなかったオチは、上記から連想しました。二人でぶつぶつ言うところが見たかったですね……。
またガスリー医師のドレナージ云々は、Michael Crumplin, Guthrie's War: A Surgeon of the Peninsula & Waterloo. 2010. Google Books より。
With hindsight I wonder why a trocar and canula (a metal tube and its introducer) had not been used to drain off the fluid, which just might have avoided Craufurd's mortal end.
生存の可能性があったとは……。当時の医療技術では助からなかったから仕方ないよねー、と折り合いをつけていたのですが。かなしい。
ところで上記の資料にある通り、クロフォード将軍の亡骸は解剖されています。きちんと綺麗に閉じてあるといいな……(*1)。それから、ウィリアム・キャンベルは叔父デイヴィッド・ピトケアン医師に続いて親しい人の病理解剖を経験していることになります。死因を知っておきたい遺族の気持ちはきっとわかっているはず。解剖結果を奥様に伝えたりしたのかな、と思ったりします。
さらなる妄想会話だよ
(無理やり復帰しようとして方々から止められそう、特にウィリキャンから。――という旨のリプライをいただいて調子乗りました↓)
ウィリキャン「軽師団は今もなお総司令官からの信頼厚く、進む時は最前に、退く時はしんがりを任されています。すべてあなたのシステムのお陰です……師団指揮官が変わっても、根幹は揺るがない」
クロ「で、俺自身はお役御免か。皮肉なものだ」
ウィリキャン「その通りです。さすが、ご明察」
クロ「」
ウィリキャン「それにアルテン将軍の方が将兵双方から人気のようですし」
クロ「フンッ」
ウィリキャン「でも僕が命を預け合いたいのは彼ではなくて、ロバート、あなたなのですが。とはいえ今の吹けば飛ぶようなあなたじゃありませんよ!」
クロ「……」
ウィリキャン「待っていますから」
ぐらい言えば何とか説得できるんじゃないだろうか! なんという白昼夢!
無理して復帰しようとするのを奥様ではなく友が止めるとしたら軍務に関してだろうという方向で考えたらこうなった。人として好きなのは変わらないけど今の状態では将軍としてはノーですよ、あなたが再び剣を掲げる未来が自分には見えています、あなたの力を信じています、という鼓舞。
要約すると「出直してこいよマイフレンド!」(そこじゃない)
ウィリアム・キャンベルの発言が容赦ないのは史料等からの想像です。高潔が過ぎて上から目線なこともあり、思考回路はドン・キホーテ。きっと、クロフォード将軍の強い感情に引きずり込まれずに距離を置いていられる力、つまり気にしないでいられるような、どこ吹く風なマイペースさがあったのだと思います。
クロ「まったく……誰が『吹けば飛ぶ』か……(ぶつぶつ)」
ウィリキャン「そうですね、確かに抽象的に過ぎました。正確には、下半身が折れてしまいそうに細く馬に乗っても一時間と保たなさそうな」
クロ「最初のでいい!」
普段自分は部下の将兵に癇癪起こしているのだから、これぐらい振り回されていればいいのになと思います。おしまい。
ウィリアム・キャンベルは悪意皆無で、真摯&真顔なイメージです。(今度こそおしまい)